陶土製造|  About

「土へ還る」

作り手の創造性は無限である、
土が秘める可能性もまた無限であると私たちカネ利陶料は信じています。
あらためて土という原点に還り、作り手が心の襞を表現できる土を探すお手伝いがしたい。
あなたの手の中に本来あるべき土をお届けします。


カネ利陶料と美濃焼の歴史

焼き物「美濃焼」という名称は、現在の岐阜県瑞浪市・多治見市・土岐市・笠原町などが、 かつて美濃の国と呼ばれていたことに由来しています。 焼き物の生産地として栄え、陶磁器とゆかりの深い土地で、その歴史は1300年にも渡ります。 7世紀に須恵器が伝来し、平安時代に釉をかけた白瓷の製法が美濃に伝わります。 16世紀から17世紀の安土桃山時代になると、茶の湯の流行から茶陶の世界が生まれます。 織田信長の保護の下、千利休や古田織部の指導により、美濃陶工の手によって生産された、 「灰志野」「志野」「織部」「瀬戸黒(引出黒)」などが生まれることになります。 江戸時代中期になると、日常生活で使われる鉄釉や灰釉の碗・皿・徳利などの食器が大量に生産されるようになりました。 現在、美濃焼は日本一の生産量を誇り、和食器の全国生産の60%以上を生産する陶磁器を生産しています。 弊社は、年表を紐ときますと、天保10年に用水をひき、明治時代に創業いたしました。 このあたりには、昔から、たいへんありがたいことに原料山がいくつかあり、屏風山からの山水で水車を回すエネルギーがあり、土づくりにとても恵まれた土地でした。今もなお、この土地で美濃焼の土づくりに携わらせていただいておりますが、大地からの恵みである資源はかぎりあるものであり、大切に使わせていただかなければなりません。また、光栄なことに、その想いを紡いでいってくださる方々が、日々、弊社に来てくださっているように思います。昔は山師という方がいて、焼き物に適した土を探したといいます。熱を加えると割れず、かたちが作れて、熱に耐えられて水が漏れないものをつくりました。窯がなく山の斜面に穴を掘っただけだったため、その温度で焼きしまる土を探した。その後、現代の窯に近いものができ温度があがるようになり、薪の灰が付着し溶けたのを見て灰が溶けてできる釉薬(灰釉)が出来上がったのだそう。 それにならい、わたしたちもその時その時の大地からの贈り物である資源に寄り添いながら、美濃焼を、後世に伝えていきたいと思っています。


カネ利陶料の陶土製造

カネ利陶料では8つの工程で粘土を作っています。機械の助けも借りますがほとんどは地道な手作業で行なっています。

01採 掘さいくつ

陶土は、1429~1441年(永亨年間)に武蔵の国の陶工が現在の瑞浪市に窯を築き、原地区の蛙目粘土を使ったのが発祥の起源と言われております。石英の粒や雲母の砂が大量に含まれており、石英の粒が蛙(方言でガイロ)の目のように見えることから、蛙目粘土と名づけられました。 粘りが強く、耐火度が高いのが特徴であり、 現在は、木を切って表土をめくり、地層に沿ってショベルカーで採取するという方法です。

02選 別せんべつ

採掘した土を、目で見て、サンプリングして、焼いて見て選別します。土場に積み置きして寝かせます。土を空気に触れさせ、永い眠りから覚めてもらいます。 市場の動向と原料山の現状に注視し、安定した原料の調達を目指しており、それと同時に新たな「土」との出会いを大切に、まだ見ぬ素材と人を繋ぐ事が出来るよう、日々意識しております。

03粉 砕ふんさい

選別した粘土の中から、ブレンドをする事なく乾燥させた後に粉砕し、ふるいにかけ粒子を揃えます。「原土」と呼んでおります素材を、生かしたまま粉砕する事により、より力強く土の持つポテンシャルを引き出す様な扱いができます。

04攪 拌かくはん

原料山で採掘された原土を、トロンミールで石と水と一緒に数時間回転させます。 「湿式」と呼ばれる粘土製造工程で、数種類の原料をブレンドし、安定した粘土を製造する事に長けています。泥の状態でふるいを通し、同時にマグネットをかけ脱鉄作業を行います。

05水 簸すいひ

泥の中からさらに粘性に富んだ粘土のエキスを抽出する工程です。泥を水ガラスで解膠(かいこう)し、撹拌槽の中で水と混ぜ合わされながら分別され、泥漿(でいしょう)となって隣接する貯水槽(写真)に流し込まれます。さらに沈殿させ、そこから鉄分などの不純物が除かれ、脱水に回ります。これは、土は自然なもののため土の状態に偏りが出ないよう、落ち着かせ安定させるために行います。平行して行う工程として、カネ利では明治から昭和初期にかけて千本杵で、花崗岩の黒雲母・長石・硅石を分ける工程を行なってきました。オルゴールのように連なりつく杵により層硅の硅石のみが石臼に残り、軽くふわっと舞い出た長石と黒雲母を水路で分離し、沈殿したガラス質である長石を、水簸した粘土と混ぜ、磁器が作られる工程が生まれ、現在の土づくりに生かされています。

06脱 水だっすい

フレットミルで出来た乾式と、水簸とトロメルの粉砕による湿式とで出来上がった土を混ぜ合わせます。それをフィルタープレス(脱水機)に通して圧力をかけながら水分を除去し、脱水した土をパレットという四角形に積み上げ型抜きします。 圧力ポンプが「ドン、ドン、ドン」と規則的な音をたてながら、毎日稼働している様子は粘土屋の鼓動と言えます。

07混練りこんねり

さまざまな性質をもった原土を、お使いになられる方のご要望に合わせてブレンドしています。 「湿式」によって作られた安定した粘土。「乾式」によって作られた素材感豊かな原料。 これらを独自のレシピによって混ぜ合わせ、作り手に寄り添った土つくりをしています。

08土 練どれん

1種類あるいは何種類かの原料土、適量の水を混ぜつつ、土を練り上げます。 弊社では土の中の空気を抜きながら練る真空土練機を使用しております。 これによりお使いになられる方は、作陶前の荒練りや土踏みの手間を省くことができます。